感想「彼方のアストラ」(その6)
以前、高名なSF作家だかアニメ監督だかが何かに書いていましたが(正確に言葉を覚えてはいないので意訳ですが)、「宇宙戦艦ヤマト」では艦載機が空母から発進する際、発進後、わずかに飛行甲板から沈下する。これは重力のない宇宙空間では物理的におかしい。だが、”ロマン”を求める「宇宙戦艦ヤマト」という作品においては、正しい演出である。
対して「機動戦士ガンダム」では、「ホワイトベース」が向きを変えるときに、「バーニア」(勢制御用補助エンジン)を使う。これは”現実的なSF色”が強い「ガンダム」において、正しい演出である。
つまり、「何を観客に伝えたいか」によって、「表現方法」は変わる。
表現≒嘘、であるのが、当たり前のことだと思っています。
「人工ワームホールなんてありえない」、「機械でちょっと測るだけで、食べられると判断できるなんておかしい」、「酸素があるからってすぐヘルメットを取るなんて、信じられなーい」とかいうところが、「SF」じゃないといわれているところみたいですが、製作者が表現したいことは、そんなことではなく、「遭難した少年たちの成長物語」であり、SFなんてものは、ただの「付け足し」でしかないのです。
それにもし明日、「人工ワームホールの発生に成功しました!」という発表がないと、誰が断言できるでしょうか?
100年前の人々が現代のわれわれの生活を見て、「魔法?」と思ったとしても、さほど不思議ではない。
手塚治虫先生でさえ、アトムの住む21世紀の世界で、まだ「黒電話」を使っているのですから。
話を「彼方のアストラ」に戻しますが、「うまくまとめたなぁ」というのが感想です。確かに、SFとしてもお話としても、「少し小粒」な感はありますが、秀作だと思います。
今季(2019後半)のアニメでは、個人的な評価では、人気「ダンベル」、ストーリー「鬼滅」、ダークホース「母」、トータルが「彼方」と「鬼滅」が競う感じでしょうか?
皆さんは、どう思われますか?